水玉小屋

2012年、アイドル〜ハロプロにはまってもろもろ。

11/20 演劇女子部『ネガポジポジ』 感想

によるハロプロ舞台『ネガポジポジ』を観てきたのでその感想。 自分が見たのは、Cパターンの千秋楽である。

演出について

今回の舞台、今までのハロプロ舞台では見たことのなかった「アンサンブル」という役が設けられていた。

このアンサンブル、役としての名前があるわけではなく、ミュージカルの群舞を構成するエキストラのような存在なんだけど、小道具を持ってキャストを操ったり、大道具を動かして場面転換を担ったり、踊り囃して場の空気を構築したりと、多岐にわたる役割を担っていた。

エキストラというよりも、歌舞伎での黒子に近いんだと思うんだけど、歌舞伎を見たことが無いので細かな違いはわからず。ただ、このミュージカルはアンサンブル無しではすっかり印象の違うものになるだろうし、もしかしたら成立自体しないんじゃないかと思うほどだった。なにせ登場人物は少ないし、喋るセリフも散文的。終始喜劇のようなアンサンブルによる賑やかしがなければ、退屈してしまったんじゃないだろうか。

それでいて、主役二人が相対する重要な場面では、アンサンブルはサッと引いて緊迫感をより際立たせる。こうしたメリハリが、物語性の見えづらいこの舞台を推進していく上で重要な役割を担っていたんじゃないかと思う。

この「アンサンブル」が一般的なのかどうかは判らないけれど、めまぐるしい展開は見ていて楽しいので、今後もハロプロ舞台で観たいなと思うものだった。

脚本について

脚本に関しては、すごく言葉を選ばないといけない。演出のところで書いたけど、とても散文的で、一つ一つの会話にさしたる意味はなく、それによって物語が推進されることもない。ただ、それら言葉の断片がパイ生地のように積み重なって、折り重なって、最後の主役二人によるカタルシスを納得感のあるものにしていることは確かだと思う。

たぶんだけど、プロットだけを読んでも、この話は何も面白くないんだと思う。由美が何をしに来たのかも結局は明かされないままだし、ホームレスになった理由もわからない。というか、あの年齢の子がホームレスにはならないだろう。

だから、脚本に関して「すごく良かった」とは言えないんだけど、でも最後の由美とりさの邂逅に感動したことは事実。謎である。こういう舞台を、昔学生演劇に通っていた頃に見たことがある。その時も、結局ずっとカオスなままで、でも最後の光景だけは今も目に焼き付いている。

こういう舞台を、自分の中では便宜的に「右脳的な舞台」と呼んでいる。反対に、LILIUMやステーシーズのような舞台は「左脳的」だと思う。前者は感情を積み重ねる舞台、後者は意味を積み重ねる舞台。まあ、無理やりな分類だけど。

キャストについて

長くなるけど、1人ずつ触れていきたい。

由美/浅倉樹々

浅倉さんの演技を見たのは、サンクユーベリーベリー以来。あの時の浅倉さんのイメージは「何考えてるかわかんない子」だった。その「何考えてるかわかんない子」が悩める学子をやっていても、正直何に悩んでいるのかわからなかったというのが当時の感想。

今もそれは根本的に変わってないけど、今回はそうしたネガな印象は持っていないし、むしろとても良かったとも思う。脚本のところでも触れたけど、結局由美という人間は「よくわからない子」なのだ。けれど、相対するりさが、感情すべてを言葉にしてくれることによって、移し鏡になって由美という人間が見えてくる。そういう難しい役柄を、意識的か無意識か、力いっぱい演じていたように思う。そう、なんか気合を感じたのである。

終演後の挨拶で、「こうして仲間と1つのものを作り上げることができて本当に良かった。この経験をこれからのつばきファクトリーにも活かしていきたい」的なことを言っていて、メジャーデビューを控えるグループのエースとして、覚悟が決まってるような印象でとても格好良かった。

なんだかんだ浅倉さんのセンターエース力は、愛理や佳林ちゃんと同クラスのものだと思っているので、頑張ってほしいものである。

りさ/小片リサ

りしゃまりゅぅうぅうぅううううううう!!!!!!!

りさまる可愛すぎワロタ。いや、笑い事ではない。これ以上現場を増やすわけにはいかないのに、もっとりさまるを見たいと思わされる舞台であった。

Aグループ、Bグループを見ていないのでなんとも言えないが、Cグループのりさは、りさまるが持つパブリック・イメージに合わせて宛て書きしたんじゃないかと思うほど、ピッタリのはまり役だったように思う。

嫉妬心が強く、思っていることを素直に言えない、グチっぽい、なーんて、別にふだんの小片さんがそういう性格でないことは分かっているけど、ああいうスネーキーな見た目で、浅倉さんとの激辛カレーゲンカとかを見てると、まさにピッタリだなと思った。

だから割と自然に演技できてたと思うんだけど、その中でも新鮮に映ったのは、「怒り」の感情を露わにするところ。りさは全編わりと怒りっぱなしで、コミカルな怒りから、昏い怒り、そしてラストの、好きだからこその怒り、そのどれも微妙なニュアンスをうまく表現していたように思う。

普段はあまり感情が顔に出ない小片さんだから、ああいう感情的な演技もきちんとこなせるっていうのは、本人の努力もあれ、とても素敵だなと思った。

まあ〜〜あとは何より可愛かったですね。由美に貸す服を探すため家の中を駆け回る時の「どけどけー邪魔だ邪魔だー」とか、好きな天ぷらを聞かれた時の「いも!私はいも!」とか、アンサンブルを追い払う時の「ガルルル」みたいな唸り声も、普段とのギャップがあるコミカルな部分がとっても可愛かった。

舞/小野琴己

なかなか不思議な立ち位置だったなとは思う。他の姉妹が割と役割がハッキリしている分、便利屋のような形でどこにでも顔を出していた。経験不足か本人の個性かはわからないが、滑舌に難があるのがちょっと残念だったけど、最後の挨拶で泣きながら「他のグループの舞より個性が無いって思われそうで、頑張って工夫した。その甲斐もあって良い舞が演じられたと思う」的なことを言ってたので、肝が座ってるところは素敵だと思った。

るみ/西田汐里

誰やねん。最近入った研修生の子かな。。しゃきたむ目当てに研修生現場に行ってる方だけど、それでもよく覚えてないレベルだ。

なんだけど、この子の演技は抜群に良かったと思う。主役を食うような目立つ演技ってわけじゃないんだけど、一番自然に見えるというか、こういうませた子供ってよくフィクションで見るな、という「既視感」をソツなく演じられたのは、キャリアも若いのにさすがだと思った。

それでいて歌も結構上手く、これからに期待が持てる人材である。

川上/一岡伶奈

いっちゃんはね〜〜〜〜、、、良かった。

欲を言えば、もっと目立つ役で見てみたかった。いっちゃんの一番の武器は、やっぱり声質だなと思う。今回は男役ということで、低めにしてたり、声変わりを表現するために掠れさせたりしてたけど、それでも歌パートで聞かせる柔らかい歌声は素敵だった。

9月の研修生公演で、自分の大・大・大好きなJuice=Juiceの愛・愛・傘を歌ってたんだけど、本家厨の自分でもいっちゃんだけは良いと思ったほどである。好青年の役も良かった。謎のポジションだったけど。あの役要るかな?いや、右脳に理由を求めてはいけない。

未知/須藤茉麻

いつもの茉麻だな。ウム。素晴らしい安定感。

ジャリンコ達と共演する以上、どうしてもああいう役が多くなるだろうから、演劇女子部では茉麻の役幅は広がらないのかもな、と思ったりした。ただ、最後の挨拶で泣いてしまった小野琴己ちゃんが茉麻に抱きつきに行ったように、ああいう存在は後輩たちにとって安心感があるだろうなと思う。

茉麻自身「後輩たちと共演すると、やっぱり"大先輩だ"って見られて、遠慮されることが多いから、今回は遠慮せずぶつかって来てねと言ったら、本当に全力で殴る蹴るをしてくれたので嬉しかった」と言っていたように、茉麻自身が演劇女子部を楽しくできてたら何よりだなと思う。

和子/梨木智香

すげーいい味出してたな。本人がパンフの中で「母と思ってやってはいません。五姉妹だと思って演じてます」と言うように、客演なのにここまで思い入れてくれてるなんてすごく嬉しいことだなと思う。

終演後の挨拶でも、自身の初舞台が脚本家・江本さんのアンサンブル役だったこともあって、アンサンブルの子達が本当によく頑張ったと言って泣いてて、ブログでも「明日から西田吉田の2人に会えないのが辛い」と書いていたようで、ほっこりする。

基本的に、ハロメンに対してお父さん・お母さん的な愛情を持ってくれる人は無条件に好きになってしまう系ハロオタでござる。サンキューナシッキ……

アンサンブル

目が悪いのもあって、遠目からでも視認できたのは加賀ちゃんと川村さん、たまに山岸さんである。

ちんちくりん体型が多いハロプロにおいて、川村さんのスタイルの良さが際立っていたように思う。1人だけ手足が長くて、ちょっとアダルティー。研修生現場で見てはいけないレベルである。

加賀ちゃんはアンサンブルでもすげー加賀ちゃんだなー、というか、寡黙な仕事人感が出てるのが面白くて笑ってしまう。加賀ちゃん主役の舞台も見てみたかったな。

最後に

ここまで来るのが長くなったけど、最後に一番印象に残ったシーンについて。

それはもちろん、由美とりさが本心でぶつかり合うシーン。

「友達になりたい」

「なってあげてもいいよ」

「やだ」

「好き」

「好きっていって」

「やだ」

「りさちゃんが好き」

なんなんすかね。すげー良かった。

一歩間違うと新手の自己啓発かよってくらい謎の展開なんだけど、納得感があった。それはもしかしたら、普段の浅倉さんと小片さんに重ねて見ている部分が作用したんだとも思う。

かたや満場一致のエース様と、かたや外様の元エース。太陽のように華やかな笑顔と、月のように神秘的な微笑、どこをとっても共通点がなく、仲良くなることなんてなさそうな2人が、ああして役柄の上とは言え、お互いの感情を曝け出してぶつかり合う。その光景がとても生々しく、ノンフィクショナルで、青臭くて素敵だった。

実際のところはどうか判らないけれど、この舞台をきっかけに、この2人が仲良くなれたらいいなと思う。

りさきき万歳!!