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2012年、アイドル〜ハロプロにはまってもろもろ。

6/2 演劇女子部『ファラオの墓~蛇王・スネフェル~』感想

モーニング娘。ハロプロ研修生、客演3名、演劇女子部2名、謎の元ハロプロ・アドバイザーによる舞台、『ファラオの墓~蛇王・スネフェル~』を観てきた。

昨年(2017年)に上演された同名舞台の新解釈Ver.。 原作は竹宮恵子の同名作品。読んでいない状態での観劇。2017年Ver.の感想はこちら

一言で言うと「差分を楽しむ高度なオタクの遊戯」だった。

アイドルへ向かう視線

舞台の内容から話は逸れるけど、自分がアイドルを視る時の楽しみの一つとして「個々人の差分に目を向ける」というものがある。

例えば自分が好きなバンドやアーティストを思い浮かべてみる。それらを楽しむ時に、ボーカルは彼/彼女以外にいないし、ギターも作詞も作曲も彼ら以外にいない。その曲を演奏するのもまた、唯一無二の彼らでしかない。

一方で、アイドルはみんなで同じ振り付けを踊り、表現する。ソロパートで同じメロディーを歌うこともある。それら「同じ作品」を「異なる人々」が表現した時に現れる「差分」にこそ、アイドルの面白さの数割が宿っていると思う。

「歌がうまい」「ダンスがうまい」という絶対的な評価軸は、どこまでいってもキリがないし、自分にもよく分からない。

でも、隣で同じ振り付けやメロディーを表現している人たちを見比べて「この子はしなやかだけど、この子は激しい」などと楽しむのに、大した技術的素養は必要ないのだ。

人の数だけ個性がある、それがアイドルの面白いところだなあと思う。

一年ごしに視る「差分」

前作では、太陽の神殿編/砂漠の月編という2パターンの公演があり、主要なキャストを入れ替えての公演があった。その時も侃々諤々、「どっちの◯◯がどうだった」という議論があったが、今年は一年ごしにそれらを視ることができる。

そう言えば、こうした楽しみ方はテニスの王子様のミュージカルのオタクがしている印象が強く、古くは宝塚やジャニーズの舞台などでも聞く。「演劇女子部の宝塚化」というのは発足当初から掲げられていたように思うが、ここに来ていよいよその傾向が強くなってきたのかな、と思ったりもした。

とにかく、そうした成熟したコンテンツならではの楽しみ方できる舞台だったなあと思う。

大幅な肉付けと、削ぎ落としたもの

冒頭で「前作の新解釈Ver.」と書いたけど、一番大きな変更点は脚本――特にラストシーンだった。

覚えている範囲で変更点を箇条書きにしてみる。

  • スネフェルの残忍さを、母子の愛憎劇として説明
  • これによりスネフェル/ナイル、という軸の他にスネフェル/メリエトという軸も増える
  • サリオキスとアンケスエンの恋愛のくだりはほぼカット
  • これによりアンケスエンがラストシーンに出しゃばらなくなった
  • ジクはケス大臣に利用される形ではなく暗躍者として活動

この辺りだろうか。逆に言うと、上記の部分以外はほぼ同じ。

去年のブログには、「アンケスエンが出しゃばって勝手に死ぬのが意味不明すぎる」とラストシーンへの不満を書き連ねたけど、今年はそうした不満はなく、納得感のあるエンディングだったように思う。

「蛇王・スネフェル」のサブタイトルにあるように、スネフェル自身の人間性/行動動機の深掘りに徹した感があり、去年スネフェルに感情移入していた立場としては腹落ちする改変だったとは思う。

のはずだったんだけど……。

ロジックと直感

ロジカルに考えると、今年の方がよくできていたように思う。現に、去年よりも泣いた気がしている。ただ、直感的には「去年の方が心を動かされた」という思いがある。左脳は今年、右脳は去年、という感じだ。

思うに、物語の軸がブレてしまったことに起因するのではないか。残忍な王と敵国の可憐な姫の純粋な恋、という古典的なテーマに一点集中していた去年と違って、今年は母子の愛憎劇が絡んできたことによって、ナイルの死の重要性が薄れてしまった。

個人的に泣いたのは、ナイルの死後にスネフェルがメリエトに感情をぶつけるシーンだったのだけれど、それほど濃い感情があるばかりに、スネフェルがナイルの自殺を止めに入るシーンが不可解にも思えた。

去年の同シーンでは、「古典ストーリーなのでそういうもの」という納得感があったのだけど、今年はスネフェルの行動動機が深掘りされているばかりに、逆にそのシーンの動機の薄さに違和感が残ってしまった。

ただし、どちらをオススメするかと聞かれると、、、恐らく悩んで今年をオススメするだろう。それほど前作のラストシーンは……。

各人の演技

ここからが楽しいとこだよな!!ブイブイいくぜ!!

以下、印象に残った順。

スネフェル/石田亜佑美

今年はとても難しかったと思う。他の役者はほとんど入れ替わっているのに、自分は同じ役、しかもダブル主演だった去年に比べて、今年は自分1人に主役の重責が乗るのだ。

座長も務めるこの舞台を前に、だーいしが様々な想いを巡らせていたらしいことは、各種オタクのツイート等からも伝わってきた(二番手関連の話も含む)。

それでも、彼女は立派にやり切ったと思う。この難しい役を、去年に見劣りすることなくやり切る、ただそれだけでMVPを取れると思う。

印象論で言えば、佐藤まーちゃんの方が印象には残っているのだが、それはあくまで一瞬のファンタジーアであって、間違いなく舞台全体を動かし、支配していたのはだーいしだった。

公演が終わり、壇上にキャストが並んで挨拶をする時のだーいしを見て、昔々に推しを辞めた身ではあるけれど(本当に立派になって……)と胸が熱くなってしまった。

演技としては、メリエトの腕に泣きついて安らぐシーンは悲痛さに満ち満ちており、新境地だった。本当におつかれ様である(まだ終わってない)。

ハイパー豆情報として、去年はラストシーンの階段上での殺陣を厚底靴で演じていたけど、今年は普通の靴だった。安全配慮、大事。

イザイ/野中美希

マジかよ、というのが最初の印象である。野中ちゃんは去年のナイルも2016年のチュチュも好演しており、その時に「なんてヒロイン力が高いんだ」と思った記憶がある。しかして、今年の演技を見て「ただ演技が上手かっただけじゃねえか!」と感動したのである(もちろん良い意味で)。

「佇まい」というものがある。役としてその場にいる時のシンクロ率というか、変な話、「今どれだけ古代エジプトに居るか」という密度のようなもので、野中ちゃんはそれが抜群なのである。

イザイが割と演じやすい役というのはあるのだけど、それでも普段の彼女には全くない引き出しである粗暴な30代の男性を何の違和感もなく演じていた。「違和感を感じさせない」というのは、脇役に最も必要な演技力だと、個人的に思っている。

去年の加賀ちゃんのイザイのように、ファンが熱狂するようなパフォーマンスではないと思うけれど、それはそれ、野中ちゃんはこのまま色んな役に挑戦してほしい。

ジク/佐藤優樹

あまり口にすることはないけれど、自分が今のアイドル界で天才だと思っている人が3人いる。
平手友梨奈、アイナ・ジ・エンド、佐藤優樹である。

自分はモーニングオタクを離れてしまったので、今のモーニングオタクのまーちゃんフィーバーを肌で感じられていないし、絶賛派にはちょっと辟易しているのだけど、一言だけ言いたい。

「このジクを見ればわかる」

例えばケス大臣とマリタが悪巧みをしている後ろでブラブラしている時に、不意にこぼれる笑い声。

例えば奴隷を痛めつけるために出てきた端役で、サリオキスを抑えつける時の、冷たく昏い瞳。

こんなに狂気を体現できる役者は佐藤優樹藤原竜也だけでは……?みたいな気持ちになる。

極めつけはナイルの内通を告発するシーン。仰々しく王にひざまずき、頭を垂れ、正義漢じみた告発をしたかと思えば、いつものまーちゃんみたいな声で「逃げてー」とナイルの声真似をする。そして響き渡る高笑い。

背筋が寒くなるとは正にあの時の感覚を言うのだと思う。「怪演」という単語を使うことができる本当に稀有な例。今が北欧神話の時代なら、間違いなくロキ(トリックスター)は佐藤優樹で、面白半分にラグナレクを引き起こすだろうと思う。

あれが演技かと聞かれると、プリンセス・マーガレットがそうだったように「佐藤優樹に合う役を宛てただけ」とも言えるが、それを200%やりこなすのだから、文句は言えまい。

メリエト皇太后/汐月しゅう

まさかのしゅうさんダブルヒロイン!!!

いや、本当にまさかですよね。ラストシーン、前作ではナイルの幻影を見たスネフェルが、まさか今年はナイルとしゅうさんの幻影を見て逝くなんて、誰が想像したでしょう……?

これ、けっこうな汐月しゅうファンが演劇女子部に来てるってことなんですかね?もちろん、ああいう難しい役を汐月さんくらいキャリアのある人がやってくれれば舞台が締まるんだけど、今までの演劇女子部を思うに破格の役どころでは……。

汐月さんがメリエトを演ったからこそ、スネフェルの母への憎しみと邂逅にリアリティーがあったのだと思っているが、それは別の人が演ってみないと判らない問題でもある。

いや~~~まさかのしゅうさんダブルヒロインは熱いわ~~~

サリオキス/加賀楓

ここからはちょっと悪い印象の方。なんだか、木村拓哉を見ているみたいだった。いや、実際の木村拓哉の演技を知らないので木村さんには失礼なんだけど、「カッコいいだけ」という印象が強かった。

立ち居振る舞いもサマになっているし、背格好もまさに主役なんだけど……。あまりに演技――特に台詞まわしが棒すぎて(見た目だけかよ……)と思ってしまった部分が強い。

元々難しい役どころではあるから、キャリアも浅い加賀ちゃんに言うのは酷な評価ではあると思うんだけど。。

いくら個性が薄いとは言え、メインどころの役なので、そこの演技が棒だとちょっとバランスが悪い=スネフェル一辺倒になってしまうのが残念だなと思った。

でも立ち居振る舞いはさすがにサマになってた。

ナイルキア小田さくら

ここから一言シリーズ。歌がさすがすぎてなんも言えねえ。ただ、歌が最強すぎるゆえに神秘的で超越した存在めいていて、か弱くもろいナイルキアには少しミスマッチだったかも、と思った。

アンケスエン/牧野真莉愛

良かった。落ち着いてた。一度だけ子供の顔になったところがあるけれど、普段の自分とは違う「静」の役をやり切っていた。

トキ/譜久村聖

ふくちゃんにナレーションをやらせるの、わかるけど演出家の怠慢だゾ☆

アリ&パビ/森戸知沙希羽賀朱音

去年が良すぎて……ごめんな、という気持ち。

ネルラ/飯窪春菜

去年と一緒だった。去年より綺麗に見えた()

ルー/横山玲奈

去年のパビもそうだったけど、「横山玲奈」のままではあったけど上手かったように思う。意外と演技に期待できそうメンである。

マリタ/生田衣梨奈

去年よりキチガイ方面に振り切っていた。良かったけど、レッド方面が見たかったのも事実。

メネプ神官/清水佐紀

かわいかった。それ以外言うことなくね?無理やり言うと、舞台の端で難しい顔をしてる時の佇まいは絶妙。

ケス大臣/扇けい

去年と同じく楽しく踊っていたのが良かった。

アンサンブル陣

小野田暖優ちゃんが笑顔で群舞をしていたのが印象的だった。石井杏奈ちゃんはかわいい。

最後に

去年のブログでは、最後に「Juice=Juiceも舞台やってください。」と書いていたら叶ったのでありがというという気持ち。

ただし脚本・演出の方の作品で好きな物がないのでかなり不安ではある。でもやっぱり舞台っていいよね。