水玉小屋

2012年、アイドル〜ハロプロにはまってもろもろ。

祈りと埋葬(12/10 宮本佳林 卒業コンサート@日本武道館)

推しの卒業コンサートを経験するのは、これで3回目になる。

1回目、2014年11月26日、道重さゆみ卒業コンサート
まるで熱病に浮かされながら観た映画の、そのエンディングのようだった。

2回目、2015年3月3日、Berryz工房活動休止コンサート。
まるで世界の終わりに空いた穴の、その中で叫んでいるようだった。

3回目、2020年12月10日、宮本佳林卒業コンサート
切迫感は、もちろん無かった。

* * *

アイドルの卒業コンサートは埋葬行為だ。

全部埋めるのだ。

楽しかった思い出も、辛かった思い出も、言いたいことや、やり残したこと、後悔や安堵や熱情や諦観や憐憫も自慰も全部全部、日本武道館の底に埋めて土で蓋をし、終わった後は手を合わせる。

葬式は死ぬから尊い

死んだ後も、今までとほとんど変わりのない死後の世界があると言われて、葬式で泣く人は誰もいない。

だから僕は泣かなかった。佳林ちゃんがJuiceを卒業した後も、差し当たってやることは変わらない。ソロ活動を追いかけるだけだ。

だが、席を一つ空けて隣にいたおじさんと、高木さゆきは泣いていたし、朋子とうえむーは目を潤ませていた。

メンバーが泣くのは分かる。彼女たちには死後の世界がない。今まで7年以上も一緒に活動してきて、それが明日からはそこに人がいないのだ。それは死にも近い感覚だろう。

オタクはどうだろうか。もしかしたら、Juice=Juiceを追いかけ続けるオタクからすると、それは死かも知れない。箱としてJuiceが好きだったオタクもそうかも知れない。ただ、箱としてJuiceを好きだったオタクは、2017年に死んだはずだが。

* * *

久しぶりに観た推しのライブは楽しかった。もちろんコロナ禍での開催のため、着席・無言での鑑賞という、「音楽の歓び」をほとんど感じられない環境ではあったけれど、それでもただ鑑賞するという意味でとても楽しかった。

同時に、アーティストがステージ上でかける「ライブの魔法」がいかに脆いかを知った。

僕がライブアイドルを素晴らしいと思う理由、それは「ライブの魔法」が強烈だからだ。音と光と、ステージの躍動と、観客の激情と、およそこの世の感情のすべてがあると錯覚するくらいに、僕はライブが好きだ。

それなのに、手足をもがれ、口を縫われたライブがいかに無情か。なるほど、「パフォーマンスを鑑賞する」という観点だと落ち着いて観られる人もいるかも知れない。多様性の時代だ。

Juice=Juiceの宮本佳林を、僕は音楽として愛していた。彼女を中心として提供される音楽空間が本当に好きだった。今日のコンサートは、果たして音楽だっただろうか?

違う、と嘆いても仕方がない。もちろん感謝している。ありがとう。

佳林ちゃん、卒業コンサートをありがとう。

* * *

Juiceのコンサートで一番記憶に残っているのはどのコンサートだろう?

初めてホールで観た、2015年江戸川のJuice=Juiceの日?
演出がとても凝っていて最高だった2016年初めてのホールツアー?
いっぱしのオタクとして参加した、初の武道館コンサート?
うだるような暑さを我慢してこぎつけた、2018年の音霊ライブ?
Juiceではないけれど、2017年のBDイベントや、2019年の佳林ちゃんソロライブ?

どれも本当に素晴らしかった。コンサートが終わった後の幸せな疲労感は、今でも鮮明に思い出せる。

ただ、こうして思い返す中で一番強く記憶に刻まれているのは、ライブハウスツアーの楽しくも苦しい思い出ばかりだ。

まず全然見えないわ、オタクが臭いわ、身動きもできず、夏の猛暑を延々歩いてたどり着いたライブハウスがまたクソ熱い京都FANJ、目の前のオタクが推しかぶりで同じタイミングでサイを掲げるから全く見えないし、親の声より聞いた定番曲、初披露のクソ曲、昼夜2回回し、それを2日連続、遠征先から夜行バスで帰る途中の尻の痛さ、東京駅から帰る時の早朝の冬の寒さ、そのまま仕事に行った時の眠さ。

全部全部全部が最高の思い出だ。

本当に本当に楽しかった。

今日の卒業コンサートを観ていて、「行ける現場はもっと行っておけば良かった」と後悔めいた気持ちになったタイミングがあった。ただ、こうして思い返していると、「この記憶が持てただけで十分に幸せ」だと思える。

もう、年齢的にライブハウス巡りはできないだろうし、佳林ちゃんのソロ活動でも地方のライブハウスの活動はないだろう。

だから、この記憶は永遠に鮮明な思い出として残る。いつか僕が墓の下に埋葬されても、そこまで持っていくだろう。

僕はこれからも宮本佳林ちゃんオタクを続けるけれど、しかしこの思い出はここに埋葬することにする。

いつまでも未練たらしく眺めるのはよそう。

宮本佳林ちゃん、ありがとう。幸せな時間をありがとう。

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コンサートの個々の感想は次回書く。