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2012年、アイドル〜ハロプロにはまってもろもろ。

6/4 演劇女子部『ファラオの墓』感想

モーニング娘。ハロプロ研修生、客演2名、演劇女子部2名の舞台、『ファラオの墓~太陽の神殿編~』を観てきた。 原作は竹宮恵子の同名作品。読んでいない状態での観劇。

一言で言うと「完成度の高い舞台だった」。

舞台の完成度とは

偉そうに「完成度」と言ったものの、それほど多く舞台を観ている訳ではなく、高校の頃に演劇部だったのと、大学の頃に学生演劇をちょこちょこ見たのと、社会人になってからはハロプロ舞台くらいしかみていない……。

そんな観劇経験だけど、「その作品を構成する要素の一つ一つがきちんとチューニングされているか」というのが完成度の一つの指標だと思って毎回舞台を観ている。

そして、『ファラオの墓』は完成度が高い舞台だと思った。

以下、ネタバレを含む感想。

総合力+α

ここからは一つ一つの要素の感想を。

物語・設定

ここはとてもストレートな部分だった。歴史を描いた叙事詩ということもあり、考察を生む凝った設定もなく、あらすじで帰結まで理解できるタイプのお話。

それが悪いわけではなく、理解に頭を使うことなく安心して観ていられるという良さもある。オタクの知人が「エジプト版ロミオとジュリエット×2」と表現していて、なるほどという感じ。

こういうストレートな物語の場合、必然的にその他の要素の重要性が高まるので、今回の場合はそこが良かった、という話。

舞台美術・演出・小道具・衣装

この辺の「お金と手間に比例して良くなっていく」ものは、今回かなり良かったように思う。去年の『続・11人いる!』の場合はSFということもあって難しかったかも知れないが、今回のエジプトの重厚感のあるものづくりは、正に舞台美術の得意分野、という印象。

演出も、舞台上にプロジェクターで映像を写す効果が自然に取り入れられていて臨場感を生んでいたし、カーテンを使った場面転換も優雅で美しかった。

衣装は本当に凝っていて、パターンも多く、アンサンブルは何度も着替えていた。それも安っぽい「エジプト"風"」の衣装ではなく、それぞれがきちんとした生地の衣装だ。大臣・神官・ユタ・イザイあたりの衣装は「本物」っぽさがあったなあ。

楽曲

ここは、実はそれほど印象に残らなかったかも知れない。同じく「物語・設定」がストレートな『我らジャンヌ』はこの部分がべらぼうに良かっただけに、あまり印象に残る曲が無かったのは少し残念。

そんな中でも良かったのは、スネフェルとナイルキアが森で逢瀬を繰り返す描写の時に歌った曲。2人のデュエットに心を動かされ、今回の劇で一番感動したポイントだった。

演技

ようやくたどり着いた!ここまで全部蛇足ですよ蛇足ゥ~~~!

ここまで振り返って、一つ一つの要素はそれほどでもなく、総合力の舞台だなあと思ってはみたけど、それだけだとフックにならないもので、何か一つ引っかかりがあると心に残るものだなあと思う。

それが今回は演技、特にだーいしの演技であった。

元々前評判が高いのは知っていた。ただ、舞台の感想って大体は「良い!」ってものしか流れて来ないのであまり気に留めてなかったんだけど、一方的に信用してるJuiceオタクの人が「めっちゃ演技が良い人がいると思ったらだーいしだった」という感想を漏らしていて、それなら見に行かねば、と思ったのである。

ただ、もちろんだーいしはもとより、他の主役級以外のメンバーの演技力も高かった。演技的にはほとんどがお遊戯だったステーシーズ、主役級以外は厳しかったLILIUMと比べると、全体の底上げがされてるのが一番「完成度」が高いと思った要因だったかも知れない。

と言うわけで一人一人感想を言いたい。印象に残った順。

スネフェル/石田亜佑美

間違い無く今回の舞台の顔だと思った。個々の役の良い/悪いは色々とあるだろうけど、LILIUMで言うところのファルスのように、「この人がいなければ成り立たない役」というのがある。それがだーいしのスネフェルだと思う。

まず役作りが徹底している。常に肩肘を張り、足を開いて歩く所作は男性らしさを表現するのももちろん、スネフェルの高圧的な性格にもマッチしていた。声色もとても男性的で、単に低いだけではなく男性的な響きを感じられたし、嫌味っぽい笑い方なども実にスネフェル的だった(多少本人の性格が向いてるのもあると思うけど笑)。

かと思えば、ナイルキアとの恋に落ちる場面では、ウルジナ王としての仮面を外した一人の孤独な男性の脆さも演じきっている。スネフェルとナイルキアが抱き合う場面は本当に互いを求め合う感情の迸りが伝わってきた。あのシーンでの2人の感情の結びつきがあったからこそ、感情的に多少無理がある、ナイルキアを自らの手にかけるシーンでも感情移入できたのだと思う。現にちょっと泣いた。

思えば去年の『続・11人いる!』でも、だーいし演じるフォースはとても男性的であった。ファルスのようなミステリアスな役はあまり合わないかも知れないが、実直だったり粗野だったりする男性役なら、今のモーニングではだーいしが一番上手いのではなかろうか。

それはそうと、ヒールでめちゃくちゃ身長を底上げしていました。多分、出演者中一番高いソール&ヒールではなかろうか。歌唱指導の新良エツ子さんも言ってたけど、あの靴で殺陣を、しかも階段でやるのは相当な勇気と努力が必要だろう。もうすっかりだーいしオタクではなくなってしまったけど、今だーいしオタクをやれてる人はきっと、えも言われぬ感情を持っているんだろうなと思う。羨ましい。

ナイルキア野中美希

2番目に好きだったのは野中ちゃん演じるナイルキア。なんだあのヒロイン力は。いつもはヒロインって柄じゃないじゃん!

てのは置いといて、何が良かったとかは実はあんまり無い。ただ自然だった。舞台演技って「◯◯が良い!」ってのよりも、まず「悪目立ちをしない」って方が重要だと思っていて、野中ちゃんはそれが無かった。あと悲劇のヒロインが似合うオーラ。

良かったと言えば、歌である。誰かも言ってたけどモーニングでの歌唱にみられる「独特のクセ」が抜けていて、とても素直な声だった。歌のパートナーがだーいしということもあり、2人のデュエットではうまくリードしていて、それがまたスネフェルの脆さを引き立てていて良かった。もちろんだーいしの歌も悪くなかったのだけど。

ああいうストレートなヒロイン演技、今のモーニング娘。でできるのはもしかしたら野中ちゃんぐらいなのかも。

サリオキス/工藤遥

どぅーはね~~~去年に引き続き、ちょっと損な役だなと思った。

ただ、どぅーはやっぱり主役が似合う人物だと思うし、ああいう華がある人が主役をやってこそ、周りが引き立つんだなあと思う。

もちろん、それは本人的にはおいしくないだろうし、演劇女子部である限り役回りは変わらないだろうから、別の環境に行くのは本人的にもいいんじゃないかなと思う。

これで鞘師がいれば、また違った役回りになったんだろうな。

イザイ/加賀楓

さすが絶賛が飛び交うだけはあった。ちゃんと舞台やったの初めて?と思ってたけど、4回目らしい。

まあ役どころ的には難しい部類ではなく、「カッコよさ」に一点特化できればいいんだけど、それがきちんとやれるのはさすが。もちろんスタイルとキャラによるところも大きいんだろうけど。

自分の中では、

  • サリオキス ⇒ 悟空
  • スネフェル ⇒ ベジータ
  • イザイ ⇒ ピッコロ

という見え方をしていて、そりゃーベジータやピッコロはおいしいよな、と思った。

アリ/牧野真莉愛、バピ/横山玲奈

モーニング娘。として見た時に、あんまり好きな2人ではないんだけど、でもこの舞台ではとても愛らしく、シリアスな舞台に唯一コメディを持ち込む役回りも含めて敢闘していたと思う。

アリに関しては、最初の群舞で(なんだあの爽やか青年は)と思ったら牧野さんであった。鬼スタイルの勝利である。あの間の抜けた演技もいい味を出していた(素かも知れないけど)。

パビのあの体型、昭和のマンガ体型というか、手塚治虫だよね。ピノコ。というかでも、ほぼ舞台初であの馴染み方は頭おかしい。やっぱり横山さんは怖い。

アンケスエン/譜久村聖

ラストシーンと一緒に触れたい。

ネルラ/飯窪春菜

飯窪さんいいじゃん!ハロオタになって5年だけど、WEAR窪さん以外の飯窪さんを手放しで褒めたのって、記憶を掘り返してもほぼ無いレベルだったのにこれは良かった!

動きがディズニーっぽい。アラジンに居そう。元々『ごがくゆう』の時に割とちゃんと演技ができていたことを思い出した。衣装も似合っていてビジュアル面も支えていた。

ユタ/佐藤優樹

ウーーーーーン、、今回はちょっと厳しい。まーちゃんのことなら大体なんでも褒める方だけど、今回の作品では消えてたように思う。抑揚の無いミステリアスな役どころ&進行役だから発声が全てなのに、滑舌がイマイチで聞き取りづらかった。

ただ、それでもビジュアルは本作の出演陣で一番良かったんじゃないかな。あの衣装とメイクだけで本作を演った価値がある(いや、ウーン……)。

マリタ/生田衣梨奈

曲者だ。曲者という言葉がこれほど似合う人物は生田くらいだ。

真っ赤なフレアーのロングスカートを翻してアクロバティックに殺陣をする様は新鮮で、多くは勢いだけの殺陣が多い中でとても優雅に映った。あれはもはや、演技というより演出の一部だ。

なんだけど、仮にも一番先輩のはずなのにあの出番の少なさはなんだろう。生田オタクの気の長さは尊敬する。

ジク/尾形春水、ルー/羽賀朱音

今回、唯一お遊戯感が残ってたのがこの2人、、って書くと嫌な聞こえ方になるな。。いや、別に批判するつもりはなくて、(あ、いつものハロプロだ!)って安心したよ。。

特に羽賀ちゃんは、王の威を借る小者っぽさを出していて面白かった。

尾形ちゃんもまあ頑張ってはいたけど、観劇後に話した研修生オタクが「その枠を歌える研修生にくれよ……」と漏らしていたので、なかなか難しいものだ。

サライ小田さくら、メネプ神官/汐月しゅう、ケス大臣/扇けい

これぞ助演!という感じ。安定の立ち回りで舞台の完成度を上げていた。こういう役はどうしても「パーツ」になりがちというか、「100%で当たり前」みたいな感じになってしまうけど、「常に100%でありがとう」という気持ちを忘れずにいたい。Feel!感じてます。

アンサンブル

おれの石井杏奈ちゃんをもっと出せ!

本作では、あんまりアンサンブルは目立ちませんでしたね。他の舞台だとけっこう台詞もあるんだけどな。やっぱりモーニングは人数が多いからかな。

ラストシーン

最後に一つ。今回の舞台、全体的に完成度が高くて楽しめる内容になってるし、スネフェルとナイルキアの好演で別離のシーンも感動的になってるんだけど、手放しで賛美できなかった理由がある。

ラストシーンがあまりに不可解だったからだ。

場面は、主役2人の対峙から始まる。

――燃える城、失墜した玉座、狂気の王が独り酒をあおる。

そこに現れた主人公。宿敵を前に、玉座を目指し階段を駆け上がる。

このシーンは本当にアツくて、正に「クライマックス」なのである。RPGなら完全にラスボス戦だ。舞台美術も衣装も、相当に仕上がっている。

なのにだ。

なのに、アンケスエンが急に歌い始めて、勝手に死んで、「愛する人の手で死にたかった」みたいなこと言うんですよ。いや、本当はもっとちゃんと色んな理由を述べてた。それは知ってる。一応辻褄が合うような構成にはなっていた。頭では理解できる。

ただ、感情が全然追いつかなかった。それまで舞台の世界に入り込んで酩酊状態になっていたのに、急に冷水をぶっかけられたように興醒めしてしまった。自分の中の全細胞がエーイングの嵐。

理由はわかっていて、やっぱりサリオキスとアンケスエンが惹かれあう描写、愛を深める描写が足りなかったんだと思う。

2人が一緒にいる描写って、最初の1シーンだけで、数十分も共にしていない。もちろん一目惚れもあるだろう。ただ、これは物語なので、ちゃんと手順を踏まないと観客の感情が追いつかないと思う。

どうなんだろう。ちょっと恋愛を神聖視しすぎかしら。ちょっとキスしただけで好きになることも、まあ現実にはあるだろうけど……。

という、そもそも惹かれあうのに無理がある2人が、死によって分かたれたとしても(あ、はい…)という感想になってしまう。

スネフェルとナイルキアの別離も、そのシーン自体は相当無理がある設定ではあったけど、事前に森での逢瀬があったじゃないですか。ああいうことですよ。形式的でもいいから手順を踏むの大事!

なので、ふくちゃんはちょっと損な役だったなあとは思う。ただ、ふくちゃんって毎回ああいう役なので、配役してる人が悪いのか、ふくちゃんがそういう星に生まれてるのか、ちょっと舞台向いてないのではと薄々思ってしまった。歌は良かった。付け足しみたいだけど歌は良かったよ!

というわけで

ラストシーンへの不満はあるものの、舞台全体として見れば完成度は高かったので、ハロオタなら見て損は無いと思う。ハロオタじゃない場合は、ちょっと分からないんだけど、まあ普通に面白いのではないか。ただ他の舞台と比べたら値段は高い。

Twitterにも書いたけど、モーニングの舞台は毎年やってるだけあって、個人のスキル以外にもお金と手間がかけられており、ゆくゆくは舞台だけでお客さんを呼べるようになるんじゃないかなあと思ったり。今はライブが主体だけど。

先日、ハロプロ研修生の高瀬くるみと清野桃々姫が演劇専門の組織に内定が決まったと発表があった。今の調子なら、このまま宝塚的なものを目指してやっていくのもアリだとは思う。

つまり!

Juice=Juiceも舞台やってください。