水玉小屋

2012年、アイドル〜ハロプロにはまってもろもろ。

8/6 OTODAMA SEA STUDIO 2018 ~J=J Summer Special~

普段、ライブの感想をブログに書くことはない。

だけど今日、まだ24時間も経っていない今日、仕事をしながらずっと頭の中でこの日の思い出が駆け巡っていた。

あの、映画でしか見ないような、嘘みたいな夏の日差しが、台風を待つコンクリートのオフィスで働く僕の目の裏に何度も射した。

このまま、あの思い出を反芻し続けると、ドロドロに溶けたゲロになって、すっかり自分に都合の良い映像に変わってしまうんじゃないかと思って、書き残しておくことにした。

* * *

「海ではしゃぐメンバーが見れる」
最初はそれが目的だった。当たり前だけど夏は暑いし、日焼けはするし、屋外は苦手だ。どうやって効率的に、メンバーが海へ出るタイミングを察知するか、それだけ考えていた。

だけど下調べをしていく中で、「品川から三浦海岸までの切符に海の家の利用券がついていること」「海の家ではパラソルが1500円、ビーチチェアが1000円で借りられること」が分かって、急に海のイメージが湧いてきた。

砂浜にパラソルを立てて、ビーチチェアに座って、本でも読んでればすぐではないか。メンバーが来たらオタクが騒ぐので、後から追いかければいい。そうだ、オペラグラスも持っていこう。てな調子だ。元々調子には乗りやすい。

* * *

当日の朝はウキウキだった。モーニングのハワイツアーに行く時に買った水着を、家から履いて行った。日焼け止めを潤沢に塗りすぎて、服や水着が白くなった。日避けにと思ってかぶった帽子は、中に熱がこもって全然涼しくなかった。

とにかく夏である。平日の朝のJRに、リゾート気分丸出しで乗り込むのはなんと気持ちの良いことか。
「みなさん、すみませんね。僕はこれから推しに会いに海に行くんです」
これは心の声。

行きの電車で、偶然オタクと鉢合わせた。微妙な距離感のオタクである。よく見知ってはいるのだが、ちゃんと話したことが無いタイプ。しかしこちとらテンションが爆上がりなので勢い同行することにした。三浦海岸まで1時間。お互いの腹が割れていない中で、ぽつり、ぽつりとパーソナルな感情を開示しあう感じは、割と好きである。

そのオタクは、尾形ちゃんの卒業をとても悲しんでいた。別に尾形ちゃんのオタクというわけではないのに、尾形ちゃんがあのタイミングで卒業してしまうことを悲しんでいた。他人の感情は100%トレースできないので、細かい説明をすると嘘になってしまう。とにかくそんな話をしながら海へ向かった。

* * *

駅のプラットフォームから階段を降りると、今度は別のオタクと会った。そのオタクもよく見知ったオタクだった。何にも示し合わせてないのに、知り合いのオタクが3人集まった。これは夏休みだと思った。

駅を出て、家並みの間を縫って、ふと路地を折れた瞬間に、海が見えた。

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ここでもう、すっかり嬉しくなってしまって、スマートフォンのスピーカーで禁断少女(Juice=Juice)を流し始めた。平田祥一郎はこの景色を見てイントロを作ったのではないか。未来人か?

* * *

海に着く。砂浜に足を取られる。海の家に荷物を預ける。屋根のあるテラスで一息を着く。目線の先には水平線。風が通り抜ける。

まごうことなく海だった。「海だ」という感情だけで、割と満足していた。しかし自分にはやることがある。メンバーの海イベントを見届けるという使命が。

ライブハウスと海岸の中間地点にレジャーシートを敷いた。その横にレンタルパラソルを立ててもらった。近頃のパラソルはドリルで砂浜に穴を空け、そこに挿し込むらしい。ようやく一息、と思ったのだが、当然のように暑い。熱い。砂の熱がサウナのようで、日陰なのに空気もサウナだった。早々に海の家に戻った。パラソルの下には、結局この1回だけしかいなかった。

ただし、このパラソルが奇跡を起こすのである。夏の奇跡を。

この日、ライブのチケットをオタクに引き渡す用事があった。そして不用意なことに、パラソルの下にチケットを置きっぱなしにしていたのである。引き渡しのために海の家からパラソルまで戻り、また海の家へ戻ろうとしていると、視界には不穏な人混み。その先陣を切ってやってきたのは、なんと我らがセイヤッキ高木!

そう、お待ちかねのメンバー降☆臨・海イベントである。発生時刻は13:40〜50頃か。たまたまチケットを取りに戻らなかったらきっと出くわさなかった。なんたる偶然、なんたる奇跡。ありがとうチケット忘れの神!

セイヤッキに続いてぼくらの宮本佳林ちゃんが朋子と連れ立ってやってきた。ここから先は感情が爆発してしまいそうなので、事実ベースでの話だけにする。

  • 佳林ちゃんとかなともが水鉄砲をかけあっていた。主に2人だけで。若干マネージャーも混ざっていて邪魔だなと思った。
  • かなともがめちゃくちゃ近くまで来てマネに写真を撮られており、恐縮していたら知り合いのピンチケが臆せずその横を駆け寄って来た。
  • 佳林ちゃんの足に砂が張り付いてるのを見て、オタクが「佳林ちゃんの足にも砂が張り付くんだ…」と言っていた。
  • 海に入りたがらない朋子の手を佳林ちゃんが引いて「ねー行こうよー、ねー」と口を尖らせてねだっていた
  • しまいには佳林ちゃんとうえむーが朋子を抱えて海に連行していた
  • 砂浜に黒い物体がいると思ったらゆかにゃだった。黒い日傘に黒い長袖パーカーで完全防備だった
  • 遠目からそっとゆかにゃに手を振ると、ゆかにゃが手を振り返してくれた
  • 海に入っている5人が手を繋いで波に向かってジャンプしていた。もちろん佳林ちゃんは朋子の隣だった。

これら一つ一つの事象に対して、筆舌に尽くしがたい感動を得たので、筆舌は尽くさない。あまりに感無量で、無料で見てしまっていることに得も言われぬ罪悪感を覚えるほどであった。課金させてほしい。

この海イベントから戻ってきて、オタク一同はぐったりしていた。既に「最高の夏、始まっちゃいましたね」とか言ってるオタクが居て、うるせえこっちの台詞だと思った。

それからは、色んなオタクのところを回ったり、グッズ列に並んだりしながら適当に過ごし、ライブの開場時間(17:00)を迎えた。

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* * *

整理番号は56番。1000人キャパのライブハウスなので、かなり前の方で見ることができる。宮本佳林ちゃんオタクとしては当然センターラインに立つのである。何よりきっと歌うであろう禁断少女の、落ちサビで宗教行為をするためには必要なポジショニングだ。

開場から開演までの1時間、この世の7割くらいを呪ったんじゃないかと思う。

海辺のライブハウス、壁や天井は一面黒で陽光を吸い続け、床は砂浜、窓は小さな換気口のみ、大型の送風機が稼働しているものの、梨の礫である。加えてどいつもこいつも汗だくのオタク。係員が前へ詰めろ詰めろと言うから、オタクとオタクの肌が触れ合う。水を持ってくるのを忘れた。一体こんな環境でライブをやろうと言い出したのはどんなサディストなんだ。アーティストがいればファンはどこでも来ると思ってるのか。その通りだ。解ってやってるんだ。こんなサウナにオタクを閉じ込めて、熱中症の危険を解らせにきてるんだ。優しいな。いや、正気の沙汰ではない。とにかく音霊を企画したやつに今すぐ『あばれてっか?! ハヴアグッタイ(Juice=Juice)』を聴かせてやりたい。

なんてことを考えながら耐えていると、ようやく開演10分前。そこでなんと、ずっとBGMでかかっていたJuice=Juiceの2ndアルバムから『あばれてっか?! ハヴアグッタイ』が流れ始めたのである。なんたる光明、なんたる機運、BGMだろうとかまわねえ、コールを入れてしまえと、「ウィーアーペーン!」に応えて叫ぶと、どうやら同志がいたらしい。あちこちで声が上がる。これだ。今まさにあばれが生まれようとしている。ええい、ままよ!グッタイ!グッタイ!アバレテッカー!……この時、オタク達は確かにあばれの産声を聞いたのである。

そして、開演の出囃子が鳴り響く――。

このパンドラの箱を開けて最初に聞こえる音、それは……!!

やなみ「ウィーアーペーン!」

そう!!!!!!!!!!!
あばれてっか?! ハヴアグッタイ!!!!!!!!!!!!!!!

まさかの選曲に、ライブハウスには怒号のような歓声が響き渡り、今まで聴いた中で間違いなく1番盛り上がったあばれであった。ハロコンで披露した時の肩透かし感はなんだったんだ兄さん。

そして一つ、ツイッターには書けなかったこと。

最初のMCで稲場さんが加入の挨拶をした時、オタクがすごく盛り上げて、まなかんコールなどが随所で入り、しまいには稲場さんが感動で泣くという場面があった。

これを見て、僕は「良かったね」と思ったのである。
まだ、どこか他人事だった。

8/1のリリースイベントで初めて8人体制を見て、思ったよりキツく、『シンクロ。』は聴いていられなかった。握手会では稲場さんの目を見れず、握手はしたものの、会釈だけして逃げるようにして立ち去ってしまった。そのことを後悔していた。3X歳にもなって、アイドルの握手会で新メンバーに優しくできないなんて、ゴミのようなオタクだと思った。なので頑張って慣れようと思った。どうせオタクを辞めることはできないのだ。前向きに慣れるしかない。

なのに、まだ少し他人事だった。周りでまなかんコールをしているオタクは、本当にJuiceオタクなのか疑ってしまうほどだった。でも、うら若き1人のアイドルが、病気から復帰し、困難な境遇にありながらもファンに迎え入れられているというストーリーは、とても感動的だった。なので笑顔で拍手をする自分は居た。

そんなこともありつつ。

ここからライブの詳細を書いていきたいのだけど、あの光景を表現できる言葉を持っていない。とにかくオタクの声がめちゃくちゃうるさくて楽しかった。オタクの声がうるさいライブは好き。メンバーも滝のような汗を流しながらブチ上がっており、見ていて爽快だった。セットリストはアルバムからの選曲が多く、いつもの曲は控えめだったので新鮮な気持ちで楽しむことができた。久々に目を閉じてヘドバンしてしまうような熱狂が、この時のライブにあった。

* * *

ライブが終わって外に出ると、既に夜だった。

さっきまで海だった方角を見ると、そこには大口を開けたまっ暗闇が広がっていた。今にも飲み込まれそうだった。全てを飲み込んでくれそうだった。風がとても強かった。一声「わあああ!!」と叫んでみた。すぐに吹き飛ばされた。

夏が終わったと思った。
最高の夏が今日始まって、最高の夏が今日終わったと思った。

この暗闇のことを、ちゃんと覚えておきたいと思った。ブログを書いた理由は、あの暗闇を閉じ込めておきたかったからかも知れない。

ライブはとにかく最高だった。メンバー降臨イベントも本当に感動した。だけど一番の思い出は、この夏の日そのものだった。

Juice=Juiceさん、海に連れて来てくれてありがとう。
宮本佳林ちゃん、今日という夏の日をありがとう。

平成最後の夏、ここに眠る〜完〜

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